多焦点眼内レンズのラインナップ
当院の白内障手術では、日本国内で正式に認可されている多焦点眼内レンズのみを使用しています。国内未承認の5焦点や7焦点タイプのレンズは採用しておりません。
TECNIS PureSee(テクニスピュアシー)
焦点深度拡張型(EDOF)
2025年に国内で承認された焦点深度拡張型(EDOF)を用いた多焦点眼内レンズです。
遠くから中間距離までの見え方をスムーズにサポートします。光の散乱を抑える設計により、夜間の見え方や乱視矯正にも適しています。
一方で、近くを見る力はやや弱めのため、場合によっては眼鏡が必要になることがあります。
Clareon Vivity(クラレオンビビティ)
焦点深度拡張型(EDOF)
2023年に国内で承認されたClareon Vivityは、非回折構造を採用した焦点深度拡張型レンズで、コントラストの再現性が高く、夜間の見え方にも優れた特長を持っています。
遠方から中間距離までの視力をカバーしますが、細かな手元作業では眼鏡が必要となることがあります。選定療養に該当するため、追加の自己負担が生じます。
夜間の運転や明るい場面でのクリアな視界を重視する方にとって、快適な見え方を得られる効果に期待できます。
TECNIS Odyssey(テクニス オデッセイ)
回折型連続焦点
2024年に国内で承認された、遠方から手元までを途切れなく見渡せる「連続焦点」を実現することを目指した新しいタイプの眼内レンズです。
夜間の運転や暗所での見え方にも配慮した設計で、眼鏡を使用する頻度を抑えられる可能性があります。
一方で、30cm未満といったごく近い距離の見え方については、従来の「強い多焦点レンズ」レベルの性能を発揮しない場合があります。
PanOptix(パンオプティクス)
回折型3焦点
2019年に国内で承認されたレンズで、遠方・中間・近方の3つの距離にピントが合わせやすいように設計されている多焦点眼内レンズです。
テレビ視聴やパソコン作業、スマートフォンの操作、読書といった日常の様々なシーンで、眼鏡の使用頻度を抑えられる効果に期待できます。一方で、夜間の光が滲んで見える「ハロー・グレア」が生じることや、ごく近い距離では眼鏡が必要となる可能性があります。
PanOptix Pro(パンオプティクスプロ)
回折型3焦点
2026年に国内承認されました。従来の「PanOptix」は約88%の光利用率ですが、「PanOptixPro]は約94%に向上しています。光が錯乱する量(視界の靄やぼけの一因)が従来より約半分に低減されています。これにより、コントラストやシャープさが向上し、特に遠方~中間距離で視認性が改善されています。従来モデルと比較して、遠方から中間距離の光のコントラストが約16%向上と報告されています。極めて近い距離では眼鏡が必要になることもあります。
Vivinex Gemetric(ビビネックス ジェメトリック)
回折型3焦点(国産)
遠方・中間・近方のいずれにもピントが合うよう設計された3焦点タイプのレンズです。特に遠くの見え方を重視する方や、夜間に車を運転する機会が多い方に適した選択肢と言えます。
一方で至近距離(手元から30cm以内)の見え方は、近方重視のレンズと比べるとやや控えめです。
また、多焦点レンズの特性として、夜間に光が滲んで見えたり、コントラストが低下したりする可能性があります。
Vivinex Gemetric Plus(ビビネックスジェメトリックプラス)
回折型3焦点(国産)
2025年4月に国内販売が始まった、日本製のトリフォーカル眼内レンズです。遠方・中間・近方の3つの距離に対応し、特に、手元(約38〜40cm)の見え方を重視した設計が特徴です。遠くの視界をできるだけ維持しながら、読書やスマートフォン操作、手芸などの近距離作業も行いやすいよう工夫されています。
ただし、夜間の光の滲みや暗い場所での見え方の変化が完全に避けられるわけではありません。
また、手術直後からすぐに馴染むものではなく、数週間から数カ月かけて、脳に徐々に見え方を慣れさせる「慣らし期間」が必要になります。
FINEVISION HP(ファインビジョンHP)
回折型3焦点
BVI社が提供する回折型の3焦点眼内レンズで、30cmほどの近距離から遠方まで幅広い距離で良好な視力が得られるとされています。
グレアは生じるものの、不快感を伴うスターバーストは他の回折型レンズより少ないと報告されています。
一方で、強度近視の方や乱視矯正に対応したモデルが用意されていないというデメリットもあります。
Acriva Trinova Pro(アクリバトリノバPro)
回折型3焦点(+EDOF特性併用)
遠方・中間・近方の3つの距離に対応する設計に加え、より滑らかな見え方を得られるよう、EDOFに近い特性も組み合わせた眼内レンズです。
テレビ視聴からパソコン作業、スマートフォン操作、読書まで、様々な距離の作業に対応できるよう工夫されています。ただし、夜間に光が滲んで見える可能性があることや、完全に眼鏡が不要になるわけではない点には注意が必要です。
多焦点レンズの見え方について
眼内レンズは、それぞれのモデルごとに焦点が合う距離が決められているため、種類によって見え方に差があります。
夜間になると、電灯や車のヘッドライトが滲んで見えたり、光源の周囲に輪のような光が現れたりする場合があります。
多焦点レンズの選び方について
日常生活の中で、「どのような距離」を「どの程度はっきり見たいのか」を整理し、ご自身のライフスタイルに合ったレンズを選ぶことが大切です。まずは、下の図を参考に、ご自分がどのタイプに近いかをイメージしてみてください。
3焦点レンズ(回折型)
3焦点眼内レンズは、遠方・中間・近方の3つの距離にピントを合わせられるよう設計されており、できるだけ眼鏡の使用を減らしたい方に向いています。
焦点深度拡張型レンズと比べると、コントラスト感度が下がることで見え方の質がやや低下したり、夜間に光が滲んで見えたり、眩しさを感じやすくなることがあります。
焦点深度拡張型(連続焦点型)とは
遠方から近方まで、ピントが合う範囲を広く確保するよう設計されたタイプの眼内レンズです。3焦点レンズと比較すると、夜間の光が滲んで見える現象が少ないのが特徴です。
遠くから中間距離まではクリアに見えやすい一方で、近くの見え方はやや弱く、老眼鏡が必要になることがあります。
沢山あって迷ってしまう場合の選び方
当院では、国内で承認されている選定療養の多焦点眼内レンズを全て取り扱っています。どのレンズがご自身の生活に最も合うのか、医師と相談しながら、ライフスタイルに最適なレンズを一緒に選んでいきましょう。
多焦点眼内レンズを選択する上での注意点
患者様の眼の状態や検査結果、日頃の仕事内容によっては、多焦点眼内レンズが適さないケースがあります。
例えば、細かな目視作業を必要とする職業の方、夜間の運転が多い方、あるいは白内障以外の眼の病気があるなど、医師が不向きと判断した場合には、ご希望があっても選択できない可能性があります。
多焦点レンズの挿入が難しい方
- 加齢黄斑変性や黄斑前膜などの黄斑の疾患、糖尿病網膜症、視野欠損を伴う緑内障、円錐角膜、角膜混濁、重度のドライアイなど角膜の病気がある方、また網膜剥離の既往がある方は、コントラスト感度が低下しやすく、多焦点レンズのメリットが十分に得られないことがあります。
- 完璧な見え方を求める方や、僅かな違和感にも敏感な方、強い不安や恐怖心を抱きやすい方(心身症的な傾向)は、コントラストの軽度の低下や細かい文字の見えにくさなど、術後の見え方が気になりやすいため適していません。
- 強い乱視で矯正が難しい場合や、瞳孔が大きすぎる・小さすぎる方、過去に眼内炎や外傷を経験した方は、術後の見え方の安定に影響が生じる可能性があります。
- 医師の指示に従うのが難しい方、定期通院が難しい方、糖尿病などの全身疾患が十分に管理されていない方、術後のケアが困難な方も、多焦点レンズには不向きとされています。
年齢の目安としては、40代~70代前半までの方で、前述の不適応な要因に該当しない方が選定療養の多焦点眼内レンズの対象となります。
眼鏡の使用をできるだけ減らしたい方や、見え方の変化に柔軟に順応できる方が適応しやすいとされています。
ハローグレアについて
多焦点眼内レンズでは、光源の周囲に輪がかかって見える「ハロー」や、光が強く感じられる「グレア」が生じることがあります。
夜間に車を運転する機会がある方は、レンズ選択の際に十分な検討が必要です。
これらのハロー・グレアは、手術後しばらくすると気にならなくなる方が多い一方で、時間が経っても気になるケースもあります。
コントラスト感度の低下
コントラスト感度とは、物の濃淡や境界をどれだけはっきり見分けられるかという視覚の能力です。
多焦点眼内レンズを使用すると、このコントラスト感度がやや低下することがあり、一般的には10〜15%ほど下がるとされています。術後しばらくは気になる方でも、時間の経過とともに脳が順応し、気にならなくなるケースが多いです。
ただし、ごく一部では、時間が経っても僅かな違和感を覚える場合があります。
見え方に慣れるまで時間がかかる可能性があります
手術直後からよく見える方が多いものの、見え方に完全に慣れるまでには1カ月ほどかかる場合があります。
特に、これまで遠近両用メガネや遠近両用コンタクトレンズを使っていた方は、脳が多焦点の見え方に順応しやすい傾向があります。
不適応について
白内障手術後に眼内レンズが目に合わない(不適応)と感じる場合には、いくつかの要因が考えられます。
多焦点眼内レンズでは、ハロー・グレアといった光の見え方の変化や、コントラスト感度の低下がライフスタイルや視覚の機能に合わず、適応が難しくなることがあります。
また、白内障以外の眼疾患がある場合や、強い乱視が残る場合も不適応となる可能性があります。
国内の報告では、90%以上の方が多焦点レンズに満足している一方で、10%弱の方は見え方に慣れず、再手術を検討するケースもあるとされています。
そのような場合、当院では眼内レンズの入れ替え・交換(55,000円・税込)に対応しています。
白内障手術後に眼鏡は必要になるのか
読書や新聞、裁縫などのように手元の細かい作業を行う際、ピントが合いにくい場合には、手元用の眼鏡が必要になることがあります。
| 単焦点眼内レンズ (遠方にピントを合わせた場合) |
手元の作業や読書など、近くを見る際には眼鏡が必要になることがあります。 |
|---|---|
| 単焦点眼内レンズ (近距離にピントを合わせた場合) |
景色や看板など、遠方を見る時に眼鏡が必要になります。 |
| 多焦点眼内レンズ (3焦点の場合) |
遠方・中間・近方の3つの距離にピントが合うため、眼鏡を使う場面は大きく減ります。 ただし、ピントの合う距離を自由に調整できるわけではないため、「中間」と言われる微妙な距離のものを見る際には、補助として眼鏡が必要になることがあります。 |
| 多焦点眼内レンズ (焦点深度拡張型の場合) |
遠方から近方まで、連続的にピントが合うように設計されているため、眼鏡を使う場面は大きく減ります。 ただし、「手元の見え方がやや弱いタイプ」の場合、細かい文字や近い距離の作業をよりクリアに見るために、補助として眼鏡が必要になることがあります。 |
選定療養の対象となる多焦点眼内レンズの費用
金額は神楽坂のもので反映しております
| 販売会社 | レンズの名称 | レンズの種類 | 料金(片眼につき) |
|---|---|---|---|
| AMO社 | テクニスピュアシー | 焦点深度拡張型 | 乱視なし:250,000円(税込) 乱視矯正:290,000円(税込) |
| アルコン社 | クラレオンビビティ | 焦点深度拡張型 | 乱視なし:250,000円(税込) 乱視矯正:290,000円(税込) |
| AMO社 | テクニスオデッセイ | 回折型連続焦点 | 乱視なし:250,000円(税込) 乱視矯正:290,000円(税込) |
| アルコン社 | クラレオンパンオプティクス | 回折型3焦点 | 乱視なし:250,000円(税込) 乱視矯正:290,000円(税込) |
| アルコン社 | クラレオンパンオプティクスプロ | 回折型3焦点 | 乱視なし:280,000円(税込) 乱視矯正:320,000円(税込) |
| HOYA社 | ビビネックスジェメトリック | 回折型3焦点 | 乱視なし:250,000円(税込) 乱視矯正:290,000円(税込) |
| HOYA社 | ビビネックスジェメトリック プラス | 回折型3焦点 | 乱視なし:250,000円(税込) 乱視矯正:290,000円(税込) |
| BVI社 | ファインビジョンHP | 回折型3焦点 | 乱視なし:250,000円(税込) 乱視矯正:290,000円(税込) |
| わかもと | アクリバトリノバPro | 回折型3焦点 | 乱視なし:250,000円(税込) 乱視矯正:設定なし |
| 眼内レンズの入れ替え・交換 | 55,000円(税込) | ||
